作新こころの相談クリニック

倫理綱領

倫理綱領

 作新学院大学大学院心理学研究科附属臨床心理センターは、相談指導員、相談員、相談研修員及び研究員等(以下「構成員」という。)の倫理綱領として以下を定める。
 
前文
 作新学院大学大学院心理学研究科附属臨床心理センターは、大学及び大学院の教育・研究機関であるとともに、地域への専門的臨床心理業務を行う専門機関として、構成員が提供する臨床心理業務の質を保ち、その対象となる人々(以下「対象者」という。)の基本的人権を守り、自己決定権を尊重し、その心の健康と福祉の増進を目的として倫理綱領を策定する。構成員は、上記の目的に沿うよう、専門的職業人であるとともに一人の社会人としての良識を保持するよう努め、その社会的責任及び道義的責任を自覚し、以下の綱領を十分に理解し遵守する義務を負うものである。
 
 臨床心理業務を行う専門職業人としての倫理的行動は以下の根本原理に拠る。
-対象者の自律性、自己決定を促進すること。
-対象者を欺くまたは傷つけるような行為を避けること。
-対象者の社会的・文化的背景による価値観、尊厳、独自性等多様性を尊重すること。
-対象者との専門的関係において、信用責任を果たし、取り交わした契約を忠実に守り、そしてそれを尊重すること。
-対象者に対し、専門的職業人として誠実かつ真摯に向かい合うこと。
 
第1条 基本的倫理(責任)
1 構成員は、基本的人権を尊重し、文化、人種、宗教、年齢、性別、能力、思想及び信条等で人を差別したり嫌がらせを行ったり、自らの価値観を強要したりしない。
2 構成員は、業務遂行に当たって、対象者のプライバシーを尊重し、その自己決定を重んじる。
3 構成員は、対象者に対する心理査定を含む臨床心理業務を、個人的欲求または個人的利益のために行ってはならない。同時に、対象者が常に最適な条件で心理査定を受けられるように、心理査定用具及びその解説書の取扱いには十分に留意する。
4 構成員は、自らの知識、能力、資質及び特性、並びに自己が抱える葛藤等について十分に自覚した上で、専門家としての業務や活動を行う。
5 構成員は、心身の健康のバランスを保つとともに、自分自身の個人的な問題が職務に影響を及ぼしやすいことを自覚し、常に自分の状態を把握するよう努める。なお、構成員は、専門家としての臨床心理業務活動を行う上で、困難や問題等が生じた場合、他の専門家のスーパービジョンもしくはコンサルテーションを受けなければならない。
6 構成員は、専門的技能向上のために切磋琢磨し、相互の啓発に努め、他の専門家との連携及び協働について配慮し、社会的信頼を高めていくよう努める。
7 構成員は、心理査定用具を、当臨床心理センターの構成員あるいは対象者以外に対して、センター長の許可なく開示したり使用したりしてはならない。
8 構成員は、各種法規や関連規定を遵守するとともに、本倫理綱領を熟知し、これを遵守する。
 
第2条 秘密保持
 構成員は、構成員と対象者との関係が、援助を行う職業的専門家と援助を求める来談者という社会的契約に基づくものであることを自覚し、その関係維持のために以下のことについて留意しなければならない。
1 秘密保持
1) 構成員は、業務上知り得た対象者とその関係者の個人情報及び相談内容について、その内容が自他に危害を加える恐れがある場合または法による定めがある場合を除き、守秘義務を第一とする。この秘密保持は対象者との相談終結後及び当センターの任用期間終了後も同様とする。
2) 事例または研究の公表に際して特定の個人の資料を用いる場合には、対象者に説明し了解を得た上で、対象者あるいは関係する他の個人及び組織が特定されないよう配慮し、必要な情報のみを記述しなければならない。
3) 構成員は業務上知り得た対象者とその関係者の個人情報及び相談内容について、対象者との相談終結後及び当センターの任用期間終了後も、守秘義務を負うものとする。
2 情報開示
1) 個人情報及び相談内容は対象者の同意なしで他者に開示してはならないが、開示せざるを得ない場合については、その条件等を事前に対象者と話し合うよう努めなければならない。また、個人情報及び相談内容が不用意に漏洩されることのないよう、記録の管理保管には最大限の注意を払うこと。
2) 相談申込票及び記録は個別カルテに保存し、所定の保管庫に施錠し保管する。カルテの外部持ち出しは行わない。相談指導員及び相談員以外の構成員は、担当しているケース以外の相談記録を、センター長の許可なく閲覧してはならない。
3) スーパービジョンやカンファレンス等で扱う書類に関しては、対象者の氏名や個別名称は明記しない。
4) 面接の内容や心理査定の結果に関して他の専門機関等から開示を求められた場合、対象者が希望しない場合は原則としてこれを開示しない。
3 記録
 構成員は、行った相談業務について、速やかに所定の記録用紙に記載しなければならない。また、面接や心理査定場面等を録音・録画する場合は、対象者の了解を得た上で行う。これらの記録媒体は所定の保管庫に施錠保管する。センター外への持ち出しは認めない。しかし、授業等で必要性が認められ、事前に対象者から了承を得られた場合はその限りではない。
 
第3条 インフォームド・コンセント
 構成員は、業務遂行に当たっては、対象者の自己決定を尊重するとともに、業務の透明性を確保するよう努め、以下のことについて留意しなければならない。
1 臨床心理業務に関しての契約内容(業務の目的、技法、契約期間及び料金等)について、対象者に理解しやすい方法で十分な説明を行い、その同意が得られるようにする。
2 判断能力等から対象者自身が十分な自己決定を行うことができないと判断される場合には、対象者の保護者または後見人等との間で十分な説明を行い、同意が得られるようにする。ただし、その場合でも、対象者本人に対して可能な限り十分な説明を行う。
3 契約内容については、いつでもその見直しの申し出を受け付けることを対象者に伝達しておく。
4 自他に危害を与えるおそれがあると判断される場合には、守秘義務よりも緊急の対応が優先される場合のあることを対象者に伝え、了解が得られないまま緊急の対応を行った場合は、その後も継続して対象者に説明を行うよう努める。
5 対象者から、面接の経過及び心理査定結果等の情報開示を求められた場合には、原則としてこれに応じる。
6 面接等の業務内容については、その内容を客観的かつ正確に記録しておかなければならない。この記録等については、特別な場合を除き原則として、対象者との面接等の最終日から5年間保存しておく。
7 対象者以外から当該対象者についての援助を依頼された場合は、その目的等について熟考し、必要であれば対象者を含めた関係者との話し合いを行った上で、対象者及び関係者全体の福祉向上にかなうと判断できたときに援助を行う。
 
第4条 対象者との関係
 構成員は、原則として対象者との間で「対象者―専門家」という専門的契約関係以外の関係を持ってはならない。そのために、対象者との関係については以下のことに留意しなければならない。
1 対象者等に対して、個人的関係に発展する期待を抱かせるような言動(個人的会食、業務以外の金品の授受、贈答及び交換、並びに構成員の個人的情報についての過度の開示等)を慎むこと。
2 近隣地域に自分以外の臨床心理業務を提供する専門家がおらず、既に知人である人に対して、やむを得ず必要な臨床心理業務を提供せざるを得ない場合には、他の関連する専門家・専門機関に紹介を行うことに加えて、既に社会的関係を有している臨床心理士が臨床心理業務を提供することの問題点についても十分な説明を行った上で、対象者の自己決定を尊重すること。
3 作新学院大学・大学院の在籍学生、あるいは作新学院大学人文学部卒業生、心理学研究科修了生から援助を依頼された場合は、専門的契約関係を持たず、他の適切な専門家や専門機関の情報を伝え、対象者の自己決定を援助すること。
 
第5条 職能的資質の向上と自覚
 構成員は、専門的知識、技術、最新の研究内容及びその成果、並びに職業倫理的問題等について、研鑚を怠らないよう自らの専門家としての資質の向上に努めるとともに、以下のことに留意しなければならない。
1 自分自身の専門家としての知識・技術の限界について深い理解と自覚を持ち、その範囲内のみにおいて専門的活動を行うこと。
2 臨床心理業務にかかわる臨床心理援助技術などを業務において使用及び標榜する場合には、その実施に足るだけの研修を既に受けていること。
3 心理査定及び心理療法、並びに地域援助などの専門的行為を実施するに当たっては、これまでの研究による十分な裏付けのある標準的施行方法により行うことを原則とする。やむを得ず、実験的段階にある方法を用いる必要性が生じた際には、対象者に対し、十分な説明を行い、同意を得た上で実施すること。
4 心理査定の結果及び臨床心理的援助の内容等、構成員がその業務において行った事柄に関する情報が、対象者またはそれ以外の人に誤用・悪用されないよう、細心の注意を払うこと。
5 自分自身の専門的知識及び技術を誇張したり、虚偽の情報を他者に提供したりしないこと。
6 自分自身の専門的知識及び技術では対応が困難な場合、又はその際の状況等において、やむを得ず援助を中止もしくは中断しなければならない場合には、対象者の利益になるよう、他の適切な専門家や専門機関についての情報を対象者に伝え、対象者の自己決定を援助すること。なお、援助の中止等にかかわらず、他機関への紹介は、対象者の状態及び状況に配慮し、対象者の不利益にならないよう留意すること。
 
第6条 臨床心理センター業務と関わる営利活動等の企画,運営及び参画
 構成員は、臨床心理センターにおける営利活動及び各種研修会等を企画、運営または参画する際には、独善的な意見や主観的な見解に終始しないように努め、公共性と社会的信頼を保持するよう努めなければならない。
 
第7条 著作等における事例の公表及び心理査定用具類の取り扱い
 構成員は、著書や論文等において事例を公表する場合には、対象者の人権・プライバシーを厳重に保護し、以下のことに留意しなければならない。
1 事例を公表する際には、対象者本人及び必要な場合にはその保護者または後見人等の同意を得るとともに、対象者等が特定されないよう、細心の配慮をして記述する。
2 記述に当たっては、対象者本人及びその家族等の人権や尊厳を傷付けるような表現は厳重に戒める。
3 事例における臨床心理援助技法及び活動については、誤解を招く記述は避け、援助技法及び援助活動を正確かつ適切に記述する。
4 事例の公表は、今後の臨床心理業務に有益であることが基本的前提である。したがって、その事例の公表は、社会的な意義を有するものであることが第一義であり、営利的活動や業績蓄積が主な目的であってはならない。
5 著書及び論文等の公表に際しては、先行研究をよく検討し、それら先行研究を盗用したと誤解されないような記述に努める。
 
第8条 心理臨床家同士の関係における責任と権利
 構成員は、他の構成員及び他の専門職の権利と技術を尊重し、対象者が最善の専門的援助を受けられるよう相互の連携に配慮するとともに、その業務遂行に支障を及ぼさないように心掛けなければならない。また、他者の臨床心理業務成果を適切に評価すると同時に、自らの業務及び研究に対する批判には謙虚に耳を傾け、誠実な態度で意見を交え、相互の名誉や知的財産権を尊重しなければならない。
 
第9条 相互啓発及び倫理違反への対応
 構成員は、同じ専門家集団として資質の向上や倫理問題について相互啓発に努め、倫理違反に対しては、以下のとおり対応する。
1 知識、技術、倫理観及び言動等において構成員としての資質に欠ける場合及び資質向上の努力が認められない場合、当該構成員に注意を促すこと。
2 構成員として不適当と思われる臨床活動や言動に接した時には、当該構成員に自覚を促すこと。
3 上記の対応後も倫理的に不適切な行為が続く場合、もしくは重大な倫理違反と思われる行為があった場合は、臨床心理センター運営会議にて当該構成員の処遇について検討する。
 
第10条 相談研修員及び研究員についての対応
 臨床心理センター内での臨床実習において、相談指導員及び相談員(以下「相談指導員等」という。)が、相談研修員及び研究員(以下「相談研修員等」という。)に職務を任せる際には、綿密な監督指導をするなど、その相談研修員等が行う職務内容について相談指導員等自身に重大な責任があることを認識し、以下の通り対応する。
1 相談研修員等が対象者あるいはその関係者に接する場合には、相談研修員等が行おうとしている事柄の内容、目的及び責任について事前に十分に説明を行い、対象者の許可を得なければならない。
2 相談研修員等は、相談員指導員等の指導を受けるとともに、相談員指導員等の指示に従わなければならない。
 
第11条 改廃規定
 本倫理綱領の改廃は、作新学院大学大学院心理学研究科委員会にて行うものとする。
 
附 則  本倫理綱領は2015年4月1日より施行する。